8月3日(土)に令和6年度の第3回のおもしろ学校を行いました。
講師は、豊橋市自然史博物館の安井謙介先生です。
理科で、テーマは「博物館は展示だけではない!博物館のいろいろ大紹介!!」でした。
20240803omoshiro_03_01最初に、「豊橋市自然史博物館」の紹介がありました。恐竜エドモントサウルスの購入がきっかけとなり、生物の進化と郷土の自然史をテーマに、1988年5月に開館しました。自然史博物館と動物園、植物園が同一敷地内にあるのは日本では唯一で、世界でも珍しいそうです。博物館の評価を示す収蔵点数は約59万点で、地方の中核都市としては多く、学芸員の方々が努力されていることが分かります。

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先生の自己紹介がありました。博物館では、魚類以外の脊椎動物を担当する学芸員です。
研究テーマは、「日本列島哺乳動物相の変遷史」で、かつて日本に生息していた哺乳動物の骨や歯の化石や、現在生きている哺乳類の骨や歯を集めて日本における哺乳類の歴史を調べています。
骨や歯が溶けにくい石灰岩地帯の洞窟で化石を採集・調査したり、田原市の海岸に打ち上げられた動物を解剖したりしているそうです。「死体が大好きで、生きている動物は怖くて苦手です」「死体を集めてニコニコしています」と言われる先生の話に参加者は興味津々になりました。

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博物館の3つの大きな活動について説明がありました。
①収集・保管 ②調査・研究 ③教育普及
資料を集めて保管をし、次世代に残すという重要な役割があります。標本があれば、後の世にさまざまなことが分かるからです。集めたものをより深く調査・研究して、それらを含めて教育普及活動(展示、ワークショップ等)をすることも大切な役割です。

博物館の定義(博物館法)
「博物館」とは、歴史、芸術、民族、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関。

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①収集・保管について説明がありました。
脊椎動物の標本には6つの形態(①交連骨格標本②分離骨格標本③液浸標本④本剥製⑤仮剥製⑥剥皮標本)あります。それぞれにメリット、デメリットがあり、展示や調査研究の目的等を考えて作製しているそうです。
骨格標本ができるまで
①動物の収集→②死体の冷凍保管・計測→③剥皮・除肉→④除肉→⑤漂白・脱脂→
⑥登録→⑦燻蒸→⑧収蔵
動物の収集は、博物館では生きた個体をワナを用いて捕殺することしないで、死体を収集しています。
・死体を見つけ(探し)、拾ってくる
・市民、関係機関から博物館に持ち込まれる
・死亡した動物園の飼育個体を譲ってもらう
先生は、死体を見つけたらいつでも収集できるように車にゴム手袋が常備してあるそうです。博物館アルアルで、事務室の冷蔵庫には、食べ物と一緒に死体が保管してあることもあるそうです。
「死体に着いているのみやだにを死滅させるために冷凍保管する」「ボランティアの方々に協力してもらって解剖している」「いつどこで取れたか、オスかメスか、体重や体長等の定められた基準を計測して記録して初めて資料となる」「ロットリングペン(製図ペン)で骨の一つ一つに番号を書いている」「皮を剥ぐのに事務用カッターが重宝している」「骨の中にも油があるので脱脂をする」等々の説明がありました。標本を作る際の大変さがよく分かりました。

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②調査・研究について説明がありました。
調査・研究のためなら、地下へでも、海外へでも、どんなところへも出かけるそうです。
洞窟で化石を採集したり、国内外の博物館を訪問して標本を比較したりしています。研究の成果を、学会で発表したり、学術雑誌に投稿したりしています。
研究をしていて、今は北海道にしかいないヒグマが、2~3万年前は浜松にいたことが分かりました。化石から、トラや大型のオオカミがいたことも分かっています。

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③教育普及について説明がありました
一番の教育普及活動は展示
○常設展示と特別展示
○幼稚園児・小学生でも興味を持ち、理解できる展示
・二段展示:目線によって異なる展示
上段~実物標本・解説文 下段~四コマ漫画・ハンズオン展示
○全ての人が楽しみながら学べる展示
・ゲームの要素を取り入れた展示、映像機器を用いて楽しめる展示
○展示をより理解するために、学芸員や博物館ボランティアによる展示解説
・展示解説会 ・ガイドツアー ・リサーチテーブル
展示以外のさまざまな普及活動
○野外でのワークショップ
○講演会
○バックヤードツアー
○学校との連携…出前授業
○実物標本等の貸出
○自然史博物館自由研究展
○教員のための博物館の日
○職場体験

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頭骨や歯の形とエサの関係について説明がありました。頭骨と歯は、上手に食べ物を得られるようになっています。エサの違いにより、頭骨と歯の形は異なります。
○ヒトを含む哺乳類の歯は、はえている場所で、歯の形が異なり、それぞれに役割があります。
<ヒトの歯の特徴>
・切歯・犬歯…形は平べったい、かみ切る役割
・臼歯…形がごつごつしている、噛みくだく役割
○魚類・両生類・爬虫類の歯の特徴
・歯の形はほぼ同じ ・歯の役割は同じ

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肉食のネコと草食のウサギの実物の頭骨を比較しました。
<ネコ>
・獲物を捕まえるため、目が前を向いている。
※ヒトはサルより進化して樹上生活をしていた。木から木へ飛び移る時に距離感を把握するために目が前を向いている。
・犬歯が発達している。突き刺すことはできる。獲物の首に突き刺して、死に至らしめている。
・横から肉を入れて奥歯でかみ切る。
<ウサギ>
・目が横についている。右目で右半分を、左目で左半分を見て、ほぼ360度見られる。敵を早く見つけて逃げられるようにしている。
・奥歯はすり鉢の横のようになっていて、食べ物をすりつぶしている。
・頭はスカスカになっている。ピョンピョン跳ぶことができるように軽くなっている。

まとめがありました。
1哺乳類の歯は生えている場所で、歯の形、歯の役割が異なる
2哺乳類はエサの違いにより、歯の形が異なる。
3哺乳類はエサの違いによりより、頭骨の形が異なる。

感想を紹介します。

○標本の収集・保管、調査・研究などの博物館の裏側について詳しく説明していただきました。知らなかったことが多く、驚きや発見がたくさんありました。本物の標本にも触れることができ、大変興味深く話を聞くことができました。のんほいパークには、以前行ったことがあり、その時に博物館も見学しました。子どもがまだ小さい時だったので記憶が定かではありませんが、恐竜の骨格模型があったことを覚えています。興味がわいてきたので、久しぶりに行ってみたいと思いました。

○動物の死体を見るとワクワクするという先生の感覚が分かってくる感じがしました。目を背けたくなる死体の中の宝物を掘り出すような体験を日々しているのかなと思いました。2~3万年前は、ヒグマもトラもオオカミも本州にいたという話をもっと聞きたかったです。骨から歴史が見えてくることが分かりました。

○今回、博物館の役割について楽しく学ぶことができてよかったです。骨を実際に触らせてもらえて歯の役割や鼻の中のことなど、なるほどとよく分かりました。豊田市にも新しく博物館ができたので、今日学んだことを頭に置いてもう一度見て回りたいと思いました。

○特に先生の死体LOVEがよく伝わってきました。バックヤードの話は、学芸員の皆さんの知恵と苦労、工夫がよく分かりました。今度豊橋に行ったら、必ず博物館へ行きます。骨の実物は、極めて合理的であり、自然のすごさがよく分かりました。

○近くに住んでいるので、豊橋の動物園に行ったことがあります。また一段と今度行く時の楽しみが増えました。楽しそうに骨の話をされている先生がとてもうれしそうで、熱意が伝わってきてワクワクがこちらにも伝わりました