9月13日(金)に令和6年度の第4回のおもしろ学校を行いました。
講師は、名古屋芸術大学の西田拓郎先生です。
国語で、テーマは「松尾芭蕉と出会う~生きた証を刻む~」でした。
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授業が始まっても西田先生の姿がありません。助手の先生に促されて「芭蕉さん」と皆で呼ぶと、芭蕉の姿をした西田先生が登場されました。
最初に、配布された2枚のプリントから「季語を1つ選んで夏の思い出を語りましょう」
という指示が出ました。
参加者が選んだ季語は、「夏の山、夏の空、夏の雲、夏の星、夏の朝、盛夏、ゴキブリ、ビール、薫風、あじさい……」でした。参加者の思い出を聞いて、季語を選んだだけで語りたくなるのが俳句の良さだと説明がありました。
俳句を始めると、幸福で、長生きできるそうです。

①俳句は→よいところを見つけて表現します。
※不満ばかり文句ばかりの人生から脱却できます。
②俳句は→65で入門、80で佳境、90からが本番です。
※いつまででもできます。西田先生は、始めて30年たってもまだ若手だそうです。
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第1章~第9章に分けてお話がありました。第1章は、「岐阜と芭蕉」です。芭蕉は、生涯に4度美濃を訪れ、数多くの作品を残しています。
○芭蕉が見た鵜飼
「おもしろうて やがて悲しき 鵜飼かな」
○芭蕉が見た岐阜の景色
「此のあたり 目に見ゆるものは みな涼し」
○「奥の細道」むすびの地・大垣
「蛤の ふたみに別れ 行く秋ぞ」
芭蕉は、その土地にあるものをほめたたえて俳句にしています。海のない大垣で「蛤」の俳句はおかしいのではと思いましたが、記念館を建てるために掘ったところ蛤がざくざくと出てきました。大垣は大消費地だったので、芭蕉も蛤を食べたであろうことが分かりました。
芭蕉は、「野ざらし紀行」の旅の途中で名古屋に立ち寄っています。名古屋のテレビ塔の北側の木々の間に蕉風発祥の地の石碑が建っているそうです。

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第2章は、「人は不満を抱えて生きている」です。男性、女性のさまざまな不満が紹介されました。
「家事や育児、私ばっかりやないの!」「私に自分の時間なんてないわ!」
「家事を手伝っているのに、妻には何もやらないと言われるから、やる気がしなくなった」……
第3章は、「俳句で幸せな生活を」でした。俳句は、いいこと、楽しいことに目を向けて、感動や喜び、発見を題材にして 、それを短い言葉に凝縮するものです。俳句は小難しいという人もいますが、自分の言葉で自分らしく作ればいいのです。そういう俳句が幸せな人生を作りますと芭蕉も言っているそうです。

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第4章は、「あなたに寄り添う芭蕉の俳諧」です。
「俳句」は近代の言葉で、芭蕉の頃は俳諧(連歌)でした。最初の575を座長が作り、次が77を作ってつなげていく皆で作るものでした。連歌の発句を取り出して俳句という形式にしました。
「松尾芭蕉」と「俳句創作」は何年生で習うのか?という質問が出されました。参加者からいろいろな学年が出されましたが、なかなか正解が出ませんでした。
「松尾芭蕉」は、小学校3年生の教科書に出てきます。以前は「古池や 蛙飛びこむ 水の音」が紹介されていましたが、今年から「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」が取り上げられているそうです。
「俳句創作」は、平成20年の学習指導要領で50年ぶりに復活し、5年生の教科書に出てきます。
葱(ねぶか)白く 洗ひたてたる 寒さかな
蚤虱 馬の尿(ばり)する 枕元
芭蕉の言葉は、「おくに言葉」であり、「やまと言葉」です。俳句を作った土地の言葉を使うため、「葱」は「ねぎ」ではなく「ねぶか」、「尿」は「にょう」ではなく「ばり」とルビをつけています。

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第5章は、「俳句はコミュニケーション」です。

ある俳句の会の受講者に、「俳句」の「俳」は、「人にあらず」という意味なんですかと言われて辛くなったことがあります。「俳」は人々が向き合っている姿を表しています。自分の気持ちや言いたいことをそのままいうのは俳句ではありません。写真を撮るように作って読者に半分まかせます。自分の気持ちや感動は全部言わないで、余地を残します。読者と一緒に作り上げる文学です。そのために、季語に語らせます。
もう俳句ができました!
パターン1
(季語)5   ○○○○○○○7  ○○○○○5
パターン2
○○○○○5  ○○○○○○○7  (季語)5
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第6章は、「小学生の俳句に大人が学ぶ」
「運動会 転んで○の 顔を見る」  Aさんの俳句(小6)
「季語は運動会です。○の中に何が入りますか?」と質問が出されました。参加者からは、「親」「母」「友」……が出されました。正解は「友」です。すばらしいドラマがあったことが伝わってきます。○の中に何が入るか考えることで、自分の思いや経験を生かして人の俳句を自分のものにすることができました。「友」以外の別の言葉を入れたくなったはずです。中学校1年生の授業では、「蟻」を入れた生徒がいたそうです。一生懸命走っている蟻に励まされて立ち上がって走ったそうです。
子どもの俳句がすばらしいのは、「素直」「感動」「自分の現在」「自分らしさ」「自分の言葉」があるからです。

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第7章は、「句会ライブ」です。
句会の手順
①俳句創作 ②提出 ③清記 ④披講 ⑤点盛 ⑥鑑賞 ⑦受賞者談
参加者全員が一句ずつ俳句を作り、画用紙に書きました。先生が作品をホワイトボードに貼っていきました。
披講
① 「(鑑賞者が名乗る)選」「入選○番」「(俳句を読み上げる)」
② 「(作者がフルネームで名乗る!)」
③ 「(特選の選句理由)」
たくさんの○がついた俳句の作者から、どんな気持ちをで俳句を作ったのか発表がありました。
参加者の作品
「かき氷 2千円超え 高すぎる」
「夏休み 宿題けっきょく 最終日」
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第8章は、「俳句創作の目的」でした。
なぜ俳句を作るのですかと聞かれると、先生は人生をより楽しく生きるためと答えているそうです。自分自身の生活がより幸せになるように、長生きできるようにするために俳句に親しんでくださいと話されました。

第9章は。「エンディング」です。
最後に、松尾芭蕉が奥の細道をしめた俳句を紹介されました。
伊勢の遷宮拝まむとまた舟に乗りて
蛤の ふたみに別れ 行く秋ぞ
感想を紹介します

○毎日忙しくて笑顔になることが少なかったですが、話を聞くだけでも自然と笑ってしまうとても楽しい時間でした。句を作るのはやっぱり難しいですが、自分の思ったまま感じたまま作る、それなら私にもできるかなと思いました。先生の話に引き込まれ、俳句に一歩踏み入れ、長生きしていけたらなあと思います。

○自分の思いを短い語句で表現するおもしろさ、楽しさを味わいました。作者の思いと第三者の思いに、共感できることや違いや気づきがあっておもしろかったです。

○「上手に作ろうと思わない。感じたまま子どものような心で素直に作る。」と聞き、「なるほど、そういうものか」と思って句を作りました。句は半分は作者のものだが、あとの半分は読み手のものであるというのも心に残りました。同じ言葉を聞いても、それに対して抱くイメージや感情は人それぞれであるということに得心しました。

○自分の作った俳句をほめてもらえてうれしかったです。今まで「俳句を作るよ」と言われたら、「えーめんどう!」と思っていましたが、今回はとても楽しく作ることができました。

○とても楽しい授業でした。俳句を作ることに異常な苦手意識を持っていましたが、少し評価の言葉を聞けて、びっくりしました。俳句はキライという意識が少し変わった記念すべき日になりました。

○楽しかった!知らないことがたくさんあったお話でした。俳句は17文字しかない制約の世界だからこそ、見えない世界だからこそ想像が広がります。今日紹介された句にも、それぞれ世界があり人生がありました。