【活動報告】令和6年度 第5回おもしろ学校にて
10月26日(土)に令和6年度の第5回のおもしろ学校を行いました。講師は、元名古屋芸術大学の鍵野いずみ先生です。美術で、テーマは「アート鑑賞、ここがびっくり!世界の不思議な絵」でした。
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初めに、図工や美術の教科書を見せていただきました。昔(先生の子どもの頃)と比べると現在の教科書は大きくなっています。先生は、中学生の時、教科書に載っていたある作品に出会ったことで美術に関心をもったそうです。ある作品とは、あまりにもリアルに描かれているクールベの「波」と、横への広がりや奥行きがすごく感じられるホッベマの「ミッデルハルニスの並木道」です。

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3人の画家の写真が提示され、だれか分かりますか?と問いかけがありました。答えは、ミロ、クレー、ピカソでした。3人とも日本で人気の芸術家で、写真を見るととても眼光が鋭い共通点があります。
次に、3枚の絵が提示され、3人の中でだれの作品か分かりますか?と問いかけがありました。参加者は、初めて見る絵が多く、なかなか分かりませんでした。
3人はたくさんの作品を作っています。クレーは9500点、ミロは8000点、ピカソは15万点です。3人とも第一次と第二次という2つの大きな大戦を経験しています。パリ万博に日本の芸術作品が出品されてから、ジャポニズムが流行しました。3人も日本の芸術作品に興味をもちました。

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「アート鑑賞、ここがびっくり!世界の不思議な絵」の一人目として、3人の中で日本に来たことがあるミロの作品をたくさん紹介してくださいました。絵を描いた時の背景や絵の詳しい説明を聞いて、どんどん芸術の世界に引き込まれていきました。

自分の画風を模索していた中でセザンヌの作品を参考にして描いた不思議なリアリティがある「シウラナ村」。
日本の生け花のような絵、静物画なのに蝶が飛んでいるヨーロッパにはない変わった描き方の「花と蝶」。
芸術家になることをあきらめさせようとした両親のすすめで会計士となったもののうつ病になり、腸チフスまで発症してしまう。静養先の農園で描いた抽象的な描き方と具象的な書き方が混在した「農園」。
「リュートを弾く人」という元絵とは違い、変な生き物がいっぱい飛んでいる「オランダの室内」。
太陽や星、月、鳥、人間を記号で表現した「絵画」「真赤な太陽と人間」「蒼天の金」。
肖像画に浮世絵を貼って仕上げた「アンリククリフトリカルの肖像」。
題名がないと絵の内容がよく分からない「パイプを吸う男」。

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次に紹介されたのがアルチンボルトの作品です。アルチンボルトは、オーストリアのハプスブルク家の宮廷画家として、ハプスブルク家を称える政治的な寓意画を描いています。「四季」と「四大元素」の2つの連作があり、「春」は「大気」、「夏」は「火」、「秋」は「大地」、「冬」は「水」とそれぞれ呼応しています。どの作品も、たくさんの野菜や果物、植物や動物などを組み合わせて表現されています。
「春」~耳にはシャクヤク、唇には赤いバラ等
「夏」~耳にはトウモロコシ、鼻にはズッキーニ、頬には桃等
「秋」~頭部をブドウ、胴体部分を樽等
「冬」~口をきのこ、頭の上の部分に枝等、マントに紋章が入っている
「大気」~鷲やクジャク等の無数の鳥
「火」~ろうそく、導火線、火おこしの木くず等
「大地」~ウサギや牛等の野山を駆けまわる動物
「水」~エビ、タコ、魚、真珠等の水中の生き物

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次に紹介されたのがトリックアートで知られているエッシャーの作品でした。参加者は、作品をじっと見つめていて、とても不思議な感覚を味わっていました。
魚はどこで鳥になったんだろう?とだまされてしまう「空と水」。
西へ東へと飛んでいく鳥の群れ、平面的に分割されて模様のような絵柄になっています。背景はオランダの風景で、左側が昼で、右側が夜になっています。シンメトリーの構図になっている「昼と夜」。
歌川国芳の「みかけはこわいが、とんだいい人だ」等の寄せ絵は、アルチンボルトの作品の影響を受けているのではないか、その逆に歌川国芳が影響を与えたのかもしれないと説明がありました。

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最後に、紹介されたのはマグリットのだまし絵(トロンブイユ)です。紹介された作品は、不思議な設定の絵や、何でと思える題名がつけられている絵があり、おもしろいなと感じました。
巨大な緑のリンゴが部屋いっぱいに配置されている「リスニングルーム」。
雨が降るように人が配置されている「ゴルゴンダ」。
誰もが知っている海、空、岩をあり得ない設定で描いている「ピレネーの城」。
鳩の中に空が描かれている「大家族」。

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絵を描くヒントの説明の後、参加者が色鉛筆を使って絵を描きました。先生から配布されたマグリットの「大家族」の鳩の中の絵を取ったものに絵を描いてもよいし、紹介された作品を写しても、まねをしてもよいと言われて、安心して作品作りに取り組みました。

<絵を描くヒント>
①好きなものを描く
食べ物、自然、花、建物、キャラクター、道具、動物、乗り物
②どんな感じで描くか
不思議、驚く、美しい、可愛い、かっこいい、気持ち悪い、温かい(暖かい)、
冷たい(寒い)、硬い、柔らかい、広い、狭苦しい、
③描写方法
・写実的-絵画的  ・抽象的-デザイン的
④形
・同じ形  ・色々な形
⑤色
・同じ色  ・色々な色  ※明暗でグラデーション
⑥大きさ、配置の工夫
・同じ大きさ、配置の変化  ・同じ配置、大きさ変化  ・大きさも配置も変化
⑦模写
・完コピ  ・アレンジ…色、形、構成
感想を紹介します

○ミロとクレーとピカソの共通点やいろいろな画法の作品があることが分かっておもしろかったです。有名な画家でもまねして描いていることを知って、まねでもいいんだと思いました。ミロの画家になることを反対されていたという生い立ちに親近感がわきました。作品のすばらしさはもちろんのこと、先生の語彙力と豊かな表現力で、作品の魅力がより伝わってきました。

○ミロの世界は楽しかったです。自分では想像できない世界が刺激的でした。

○ミロは正直得意ではなかったので勉強になりました。絵だけだと記憶になかなか残りませんが、歴史の説明もあったのでよく頭に入ってきておもしろかったです。

○とても興味深い授業でした。特にミロの作品を順を追って見ることができて、見方・考え方を身につけることができました。しかし、やはりそれ何???というものもありましたが、それもミロなのですね。頭の中が活性化することができました。アルチンボルトやエッシャーは好きな画家です。知らない作品も紹介してもらって楽しく見せていただきました。なぜ皆が評価するのか、今後も考えながらみたいと思います。