平成25年度第5回の志友会おもしろ学校が9月20日(金)19時00分~20時30分に「ウインクあいち」を会場に開催されました。
第5回の講師は愛知県教育委員会尾張教育事務所の土井謙次先生。テーマは「いいつあよたまみの通知表」でした。

「いいつあよたまみ」とは中学校の歴史の教科書に出てくる江戸時代の人物の頭文字を並べたものです。家康、家光、綱吉、新井白石、吉宗、田沼意次、松平定信、水野忠邦の8人です。この中から綱吉について学びました。
はじめに「綱吉に通知表をつけると?(5段階評価)」ということで、各自が評価をつけました。次のような分布になりました。
評価5(1名) 評価4(4名) 評価3(10名) 評価2(38名) 評価1(3名)
圧倒的に低い評価でした。
授業は次のように進みました。
綱吉の治めた時代に元禄文化が花開きました。また、人口も増加しています。
次の問いは「綱吉が無能だとしたら、なぜ元禄時代は繁栄したか 本当に無能なのか」
綱吉の生涯をたどりました。綱吉は、殉死を禁止し、側用人を身分でなく能力で採用し、湯島聖堂や昌平坂学問所を作ったりしました。
綱吉の評価を下げている「生類憐れみの令とは?」
実は「生類憐れみの令」というものは存在しない。新井白石が綱吉の出した種々のお触れをまとめてこう呼び、低い評価を与えたものでした。
綱吉は平和な社会を実現するために現代でも通用するような施策をたくさん実行しています。生類憐れみの令で重罪になったのは数人それも武士階級のみ、何万人も罰し、人々を苦しめたというのは白石のでっち上げでした。
綱吉は最高の福祉政策で日本に平和をもたらし、インフレ率年3%で経済を活性化し、寺院造営で公共事業を行いました。
それでは「なぜ綱吉は評判が悪いのか」
「忠臣蔵」として有名な浅野内匠頭の事件が起こります。世論は赤穂浪士を支持し、忠臣蔵は今にまで続く人気者になりました。しかし、その真実は統合失調症の浅野が城中で突然吉良上野介に斬りつけ、切腹させられ、その家臣が吉良を逆恨みして殺したというテロ行為でした。
綱吉の悪評を覆したのがドイツ人ケンペルの綱吉についての記述でした。
参考文献『ケンペルと徳川綱吉-ドイツ人医師と将軍との交流』B・ベイリー著(中公新書)
次回の教科書からは綱吉の評価が一変することでしょう。
最後に、再度綱吉に通知表をつけました。



評価5(24名) 評価4(34名) 評価3(11名) 評価2(1名) 評価1(0名)
綱吉の評価が完全にひっくり返りました。

感想を紹介します。
・情報だけに自分が流されないこと。相手を考え、真実を知ること。そして、「人」をたくさんの視点で見てみること。そしたら、違ったことを知ることができるかもしれない。
・くもりない眼で真実を見ることのできる自分づくりを心がけていきたいと思いました。近すぎるゆえに見えないという言葉も心に響きました。歴史のおもしろさを知ることもできましたが、それ以上に人として何を大切にしていかなければならないのかを教えていただきました。
・「知らない」ということはどれだけおそろしく頼りないことかと感じました。また「疑問を持つ」ことのおもしろさに気がつきました。
・“教科書”に記述されていることが正しい、全てだと思っていると真実に近づけない…。真実が何かを知る確かめる力は受け手の側にも必要。