平成25年度第8回の志友会おもしろ学校が12月13日(金)19時 00分〜20時30分に「ウインクあいち」を会場に開催されました。
第8回の講師は岩倉市立南部中学校の高橋宏滋先生。テーマは「マル秘だからおもしろい!」でした。
はじめに新潟の地図を見せ、「何か足らないものは?」という問いかけから始まりました。佐渡がないとすぐに気づきました。
その佐渡の対岸の出雲崎が今日の舞台です。出雲崎に関わりのある3人とは?
最初に出てきたのは松尾芭蕉でした。
荒海や佐渡によこたふ天河
「この芭蕉の句は明るいか、暗いか?」
明るい19人、暗い40人と第一印象では暗いと感じた人が多くいました。
「この情景を絵に描いてみてください。」
皆それぞれに絵を描きました。
「さっきの俳句はどこかおかしくないですか?」
佐渡と出雲崎は直線距離で50km。夜に佐渡が見えるのか?
荒海は冬の日本海のイメージ。
天河は秋の季語。
高橋先生は実際に出雲崎へ行って聞いてきたそうです。
すると、月の明るい夜なら佐渡が見えるという答えが返ってきたそうです。
「7月4日は満月か?」
旧暦4日は三日月の次の日。満月ではない。
次に天文シミュレーションを使い,この日の空を見てみました。
すると、天河は佐渡の上に横たわってはいませんでした。
また、曽良の記 事を読むとこの日は雨。
つまり、この俳句は実際に見た風景ではなくイメージのようなのです。
佐渡、出雲崎の解説があった後、もう一度明暗を聞きました。
明るいが増え、暗いが減りました。
華やかな金の裏にある流人の姿から暗いと感じる。
人が集まり、商業が発展し、文化が栄えている様子から明るく感じる。
など意見が出ました。
つぎに、芭蕉の「銀河の序」という書物に出ている俳句が紹介されました。
文月や六日も常の夜には似ず
(7月6日も普通の夜ではなく特別ですよ。七夕の前の夜の高揚感が詠まれている)
この俳句の紹介でほとんどの人が明るいに変わりました。
続いて2人目の登場です。その人は世阿弥。
秘すれば花なり 秘せずは花なるべからず (風姿花伝より)
わかる人だけわかればいいという考え方がここにある。
そして、3人目は良寛。
子どもたちと毬をつきつつ暮らしているお坊さんというイメージの良寛。
良寛は何もかも捨てて、自由に生きた自由人でした。心の奥を隠して子どもたちと遊ぶ、そんな姿が浮かんできます。
散る桜残る桜も散る桜
裏を見せ表を見せて散る紅葉
こんな句を作っている良寛をどう思いますか。
この3人に共通すること
・本心は見せない.「秘する」「隠す」美しさ
・マイナス思考の美意識
最後に日本文化と西洋文化を比較しました。
長谷川等伯の「松林」とターナーの絵
竜安寺の庭園とベルサイユ宮殿の庭園
伊勢神宮とノートルダム寺院
日本のマイナス思考と西洋のプラス思考が見事に浮かび上がりました。
日本人のマイナス思考の価値を問い直す。これが「マル秘だからおもしろい!」という今日のテーマとしっかり結びつきました。
感想を紹介します。
・明るくなくてはいけない。プラス思考でなくてはいけないと強迫観念を迫られる今の世の中で住みづらさを感じている人たちは、きっと 今日の授業で救われたと思います。
・ネガティブだから暗い心情というわけではなく、それを素直に受け入れる良寛の行き方は現代人にかけている部分なのかなあと感じた。
・「秘する」「隠す」美しさ、「マイナス思考の美しさ」そういう視点で物事を考えたことがなかったので、とても感動しました。
・感情や欲に任せて生きるのではない。芯の部分を隠し、周りの人々への心遣いをし、裏表なく生きていかなければと痛感いたしまし。
授業終了後、閉校式を行い、今年の皆勤賞の表彰をしました。