【活動報告】令和3年度 第5回おもしろ学校にて

10月8日(金)に令和3年度の第5回のおもしろ学校を行いました。
講師は愛知県教育委員会の長谷川濃里先生です。
算数でテーマは「そうだったのか算数の授業」でした。
自己紹介の後、早速一問目の問題が出されました。

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問1
10から99までの2けたの整数が1つ書かれています。
この数をあててください。
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「×△○で評価します。正解だと「ピンポーン」のボタンを押します。」
「ホワイトボードに裏向きに貼られた数を当ててください。」
この問いに参加者は次々に答えていきます。それに対して、「×△○」で評価されました。

「99」「××」
「45」「××」
「33」「△○」
「88」「××」
「30」「△×」

メモを取っている人がほめられ、あわててメモを取り始める人も。

「53」「×○」
「23」「×○」
「43」「×○」
「73」「ピンポーン、正解は73です。」

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「何か分かりましたか。周りの人と相談してみてください。」

参加者は、周りの人と相談を始めました。
「話し合いをやめてください。今度はもっと早く分かりそうですか。」
「次の問題にいきます。」

参加者は、予想した数字を発表します。

「64」「××」
「25」「○×」
「21」「○×」
「27」「○×」
「24」「○×」
「28」「○×」
「23」「○×」
「20」「○×」
「29」「ピンポーン」

「○△×の仕組みをどうとらえていたか発表してもらいます。」
「○は、数字も位も合っています。△は、数字は合っていて位が違っています。×は、数字も位も違っています。」

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「小学生だとだいたいここまでで終わってしまいますが、皆さんはもう少し先までいきたいと思います。何回目だったらその数を当てることができますか。周りの人と相談してみてください。」
「何回で当てられるか聞いてみます。1回…5回…9回、10回、それ以上。」
「一番短い人は5回で当てられると言っています。それには何か秘密が、こういう聞き方をすると当てられるという何かがあるはずです。5回で当たるかやってみましょう。」

「10」「×○」
「23」「××」
「45」「××」
「67」「××」
「89」「○×」
「答えは」「80」

「5回でデータをとって、6回目で必ず当てることができます。」

「これを小学校1年生の教室では一回りずっとみんなで当てていきます。一回りで当たらないと悔しいので二回り目となりますが、高学年になるとこういうことをだんだん考えてきて、△と言われた数字は二度と聞かなくてもよいということが考えられるようになってきます。」

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「ここまで考えたら次にどんなことを考えるといいですか。」
「三本指を出している人がいます。今度は三桁だったら何回で当てることができますか。」
「二桁やったら、三桁だったらどうなるか、四桁だったらどうなるかと考える子を算数科では育てたいと思っています。」

「小学校、中学校、高等学校の学習指導要領の算数・数学の目標が書かれた資料を見てください。小学校も、中学校も、高等学校も目標はほとんど変わりません。やりたいことは皆同じです。」

「今回の数当ての問題は、この目標に合致しているでしょうか。1年生も高学年も、一生懸命考えて、授業を楽しむことができる内容にはなっています。」

 
問2
1本100円(税込)のアイスキャンディーを売っているお店があります。
このお店では、アイスキャンディーを食べ終わったあとの棒を2本持って行くと、新しいアイスキャンディー1本と交換してくれます。アイスキャンディーを何本食べることができるでしょう。
 

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「300円持ってお店に行きました。この子は何本食べることができるでしょう。」
「3本、4本、5本、6本、それ以上…答えは5本です。」

「ひなたさんは400円を持ってお店に行きました。何本食べられるでしょう。」
「7本です。」

「たいち君は1000円を持ってお店に行きました。何本食べられるでしょう。」
「19本です。」

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「同じ19本と答えを出しながら、問題を出したとたんに手が挙がった人と、それから長い時間がかかった人がいます。ばっと手が挙がった人はどうしてそんなに早かったのでしょうか。説明してもらえませんか。」

「……1本買ったら1本食べられます。2本買ったら3本食べられます。買う本数が1本増えるごとに食べられる本数は2本ずつ増えます。10本買うと2本増えることが9回繰り返されます。だから最初の1本に増えた数2×9の18を足した数の19が答えになります。……等差数列で……n本になると1+(n-1)×2……」

「今の話を踏まえて、10本買った時に19本がどうして早く出せたのか、自分の考え方で求めてみてください。この時大切なことは、先ほどの算数・数学の目標にもありましたように、学習したことを振り返ったり、次に私から出されるだろう問題を予想したりして考えてみてください。」

「かいと君は10000円を持ってお店に行きました。アイスキャンディーを何本食べられるでしょう。」
「199本です。」

20211008omoshiro5_08 「どう考えたんですか。」
「2n-1で考えました。」
「どうやって使うのか、もう少し説明してください。」
「買った本数nを2倍して1引いた数が答えになります。」
「これだと確かに早くできますね。」

「小学生に等差数列の考え方を説明しも分かってもらえません。2倍して1を引くと言っても、なんでそうなるのと言われてしまいます。小学生にも分かるように説明するにはどうしたらいいですか。周りの人と話し合ってみてください。」

「nを使うと分かりにくいので、増えていく2がいくつあるか説明すると分かりやすいです。最初の1に増えた2を足すと答えが出ます。」

「1本買っても増えませんが、もう1本買うともう1本もらえます。またもう1本買うともう1本もらえます。1本買うと2本買ったと同じになります。買ったアイスキャンディーの間の数がもらったアイスキャンディーの数になります。……」

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「私の考えと一緒です。2本買うと1本もらえます。もう1本買うと。上のと下のでもう1本もらえます。こんなふうにして増やしていくとこの図のようになります。下が買ったアイスキャンディーの数、上がもらったアイスキャンディーの数になります。この話をすれば小学生も納得するはずです。」
「どうして2倍して1引くと答えが出るんだろうというハテナ(?)を子どもたちに与えていくことは算数では大事だと思います。」
「この問題とよく似たパターンの問題があります。分かりますか。トーナメント表です。勝者ではなく敗者を決める試合になります。10チームあれば、優勝する1校を除いた9試合が必要になります。もらったアイスキャンディーの数とトーナメントで負けたチームの数は同じになります。」
「世の中にあるものであの考え方とこの考え方は同じじゃないかなと考えられるようになると数学的な見方が広がっていくと思います。」
「もう一度算数・数学科の目標に戻ります。キャンディーの問題は、日常のものなんだけど、モデル化したり、式にしたりして考えることができて目標に合っていると思います。」
「最初の数当ての問題は、教科書にはありません。算数の授業としてはふさわしくないかもしれませんが、数学的な考え方を伸ばすことはできていました。」
「長年、算数・数学に携わってきたものとして、先生方が算数・数学科の目標に立ち返って、今日はこんなことを伸ばしたいと思いながら授業をしてもらいたいと願っています。」

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<事前アンケート結果>
1 小学校・中学校の算数・数学の授業は好きでしたか。
・ 好きだった……………………………22.2%
・ どちらかといえば好きだった………44.4%
・ どちらかといえば嫌いだった………11.1%
・ 嫌いだった……………………………22.2%

2 「好き」「どちらかといえば好き」と答えた方は、その理由をお書きください。
・ 証明問題等、自分で解けた時、とてもうれしかったから。
・ 小2からそろばんをやっていて、数字には触れ合っていたため、計算には自信があったから。
・ 正解に辿リつくまでの過程をあれこれ考えるのが面白い。
・ 問題の答えが1つしかなくて取り組みやすかったから。
・ 解けた時が快感。

3 「嫌い」「どちらかといえば嫌い」と答えた方は、その理由をお書きください。
・ 公式や解き方を記憶するばかりで、楽しくなかったように思います。
・ 答えが分からなかった時に暗記で乗り切ったから。
・ 数学の公式が訳が分からなくなりました。

感想を紹介します。

○算数・数学というと難しいという感じがあったのですが、数字当てから筋道を立てて考えるというやり方で、脳が活性化したような感じがしました。なぜそうなるかを考えることが大切であるとともに、その考えが社会でどのように使われているかが分かるともっと楽しくなるかもしれません。

○数当てやキャンディーの本数というささいな(といっては失礼ですが……)ことから、法則や数式・モデルを見出すところまで考えられることにびっくりしました。また感動しました。キャンディーの本数の件で等差数列という難しい方法より2n-1で求められることが分かった時悔しいと感じました。でも、小学生に分かりやすく説明するにはどうすればよいかということを改めて考えることができました。

○数字・公式が苦手で初めから拒否反応のある感じがしましたが、ゲーム感覚で学んでいくとおもしろかったです。学校で数学というものを嫌いな生徒も、もっと楽しく学べるようになると、数学嫌いが直るのではないかと思いました。学ぶことを楽しみ、ちょっとしたことに目を向けて考えていくことをもっとしていくと数学のおもしろさが分かると思いました。もっと早く知りたかったです。

○先生のお話、とても柔らかく聞きやすい言葉で楽しく参加させていただきました。とてもすばらしい授業でした。算数・数学に触れる機会が少ない中、整数の基本的な数当てゲームで数学を十分楽しむことができました。参加者からも、等差数列という懐かしい数学用語を聞いたことも嬉しかったです。

○小学生にも分かるようにという話がありました。小学校1年生の子どもがいるので、今度アイスの話をしてみようと思いました。